21/06/07 講演内容「あわい」
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21/06/07 講演内容「あわい」

2021年6月7日に甲府ロータリークラブさんでお話させていただいた講演の内容をご紹介いたします。

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みなさま、こんにちは。
特定非営利活動法人Cafe de 寺子屋 理事長の大石紗矢香です。
本日は、「あわい」というタイトルでお話しさせていただきます。

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「あわい」とは間と書いて、人と人の間柄・相互の関係という意味があります。おおまかな内容は、当団体の全体像と組織のあり方に関する考えについてです。どうぞよろしくお願いいたします。

活動概要

私たち「Cafe de 寺子屋」は名前の通り、営業時間外に地域のカフェで寺子屋を開いています。寺子屋では大学生が小学1年生から高校3年生の自学自習のサポートを行っています。

教育方針

私たちは、ただ勉強を教えているだけではありません。私たちは伴走者となり、子どもたちが自分の興味関心に従った主体的な学びができるようにお手伝いをしています。

具体的には、わかっているつもりの人にわからないことを気づかせてしまうというソクラテスの問答法を参考にした「教えないで教える」というものを実践しています。例えば、子どもが問題を解けていてもやり方を覚えているだけという場合があるので、私たちが問いかけることで本当の理解を促すというものです。

また、子どもが普段行っている学びから一歩踏み出すきっかけを提供する「プレゼント」を実践しています。子どもたちは寺子屋に学校の宿題を持ってくることが多いですが、ただその宿題をこなすだけにとどめてしまうのではなく、+αの学びにつなげていくというようなものです。

ミッション

私たちがそのような独自の教育方針を取っている理由を説明するために、まずは私たちのゴールについて説明します。私たちのゴールは、ミッションである「すべての価値観が尊重される中で、自分自身で判断し、言動を選択できる社会の実現」を達成することです。簡潔に言うと「すべての人が周りの人のことを尊重しながらも、主体的に生きられるようにしたい」ということです。

課題意識

主体性が失われる原因のひとつは学びがゆがんでいることだと、私たちは考えています。私たちが考える「学び」は、呼吸や汗をかくことと同じように自然なものです。

しかし、学校教育では「学び」は体験しにくく、型にはまった「勉強」を強いられることで、学びが不自然なものになっていきます。例えるなら、冷房の効いている部屋でずっと過ごしていたせいで、汗をかけなくなってしまったようなものです。

私はこの学びのゆがみについて、課題意識を強く感じた経験があります。私は学部生の4年間、塾講師のアルバイトをしていました。その際に、大学受験に向けて必死に頑張る高校生を見ていました。しかし、大学内で周りを見てみると、一生懸命取り組んでいない大学生がたくさんいました。
その違和感について考えた時に、きっと私が見てきた高校生がしていたのは、外からの圧力に突き動かされてしていた「勉強」であって、「学び」と呼べるものではなかったのだと思いました。

私たちは寺子屋で独自の方針のもと教育を実践することで、「勉強」という枠組みをなくし、学びを自然な状態に戻していきます。

ビジョン

私たちが想像する未来についてお話しします。

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まず、大学生による寺子屋が47都道府県すべてにあります。子どもたちは寺子屋で、大学生と一緒に自分の興味があることについて学んでいます。学校の教科に限らず、ギリシア語を学んでいる子や、植物図鑑を読んでいる子、小説を書いている子もいます。

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そのさらに先の未来では、町内にひとつは寺子屋があります。寺子屋は毎日開いていて、子どもたちは気が向いた時に好きな寺子屋にふらっと立ち寄ることができます。そのころには大学生だけではなく、高校生や地域の大人も子どもたちの伴走者となり、一緒に学んでいます。

寺子屋で「学び」の感覚を取り戻した人たちは、寺子屋の外でも学べます。そして、その人たちを媒介として、寺子屋の外でも「学び」を取り戻す人が増えていき、学びが本来の姿に戻っていきます。

目標

そのような未来を実現するために、初めのステップとして、「2023年3月までに、47都道府県すべてに寺子屋をつくる」ことを目標にしています。

現状

その目標のもと、私たちは1年間活動を続けてきました。その成果の一部をご紹介します。

山梨県では、2018年から寺子屋を続けてきました。しかし現在、感染症拡大に伴い、店主さんのご意向でお休みしています。
一方で、株式会社アルプスさんのご協力で、まるごとやまなし館さんで寺子屋を開催できることになりました。隣の東京都の緊急事態宣言が解除されて以降開催する予定です。
また感染症拡大に対応して、カフェではなくお寺さんで期間限定の寺子屋を、近日中に開催予定です。山梨大学の近くの要法寺さんにご協力いただくことが決まっています。

山梨県以外では、静岡県で2つの寺子屋を開催しています。
また、東京都でも寺子屋を開催する準備が整っています。緊急事態宣言解除後に開始する予定です。
山梨・静岡・東京以外にも、北海道から沖縄まで6都道府県で寺子屋をつくる動きを進めています。

実際の寺子屋

通っている子どもたちは、寺子屋をどう思っているのか、アンケートを取りました。その結果、子どもたちは寺子屋について、「家・学童・塾より集中できる」「学校より楽しい」「友達と楽しくできるのに、勉強が深まる」「楽しく学んだり、発見したり、振り返ったりできる」と答えてくれました。「わからなくても良いということを寺子屋で学んだ」「寺子屋は私の自慢の場所!」という声もありました。
みんな楽しんで通ってくれていて、そして、学校や塾とはなんだか違う学びを実感してくれているようで嬉しいです。

実際に私が活動する中で感じた子どもの変化は、初めは落ち着いて座っていられず、テーブルの下に隠れたりして遊んでいた子が、回を重ねるうちに、自分でやることを決めて自学自習に取り組めるようになってきたことです。

保護者さんからも「以前は家ではゲームばかりしていたけど、寺子屋に通うようになって家でもだんだんと自学自習ができるようになってきた」という声をいただいています。

内部での変化

以上のような目に見える動きに加え、内部でも大きな動きがありました。それは、組織のあり方の変化です。ここからは当団体の組織についての考え方をお話していきます。
当団体は、非営利組織で教育分野というみなさまの組織とは異なる背景を持っています。そんな当団体の組織についての考え方は、組織論の定石から外れているかもしれません。少し変わった事例として聞いていただければと思います。

まず当団体の構造を確認します。当団体は利益や競争の影響を受けずに、本質的な教育を行いたいと思いました。そのために、市場原理から距離のあるNPO法人として設立しました。
組織図としては、「理事会」の笠のもとに、「大学生による学び支援事業部」、「社会人スタッフによるバックサポート部」、今後行っていくであろう「他事業部」の柱がある構造になっています。

ロータリークラブ プレゼン

中でも、「大学生による学び支援事業部」内に大きな変化がありました。

変化の経緯

大学生による学び支援事業部の発足当初は、トップダウンのピラミッド構造をとっていました。それは、意思決定の速さを優先していたためです。当初は人数が少なかったためにそれでも機能していました。

しかし1ヶ月程して、メンバーが30人を超えたくらいから、代表を中心としたピラミッド構造では手が回らなくなり、組織が上手く機能しなくなってきました。

代表の私が「みんなが動いてくれない」と嘆いていた時に、メンバーから「代表が大変そうなのはわかるけど何をしているかわからない。」「勝手に決められていることがある。」というような声がありました。

それまで私はメンバー個人の問題だと思っていましたが、その声を受け、確かに、メンバーにとってやりづらく、主体性が発揮しづらい環境だったと気が付きました。そこで、会議を開き、「では、どうするか?」をみんなで考えていきました。

目的のための手段である組織構造もまた、目的に沿っていなければいけません。繰り返しになりますが、当団体の目的は、ミッション「すべての価値観が尊重される中で、自分自身で判断し、言動を選択できる社会の実現」です。よって、当団体の目的に沿った、信頼と主体性を前提とする組織形態である「ティール組織」がサンプルに選ばれました。

ティール組織

ティール組織とは、指示を受けなくてもメンバーそれぞれが自律的に意思決定を行うことで柔軟に変化しながら、共通の目的に向かっていく組織です。

ティール組織の大きな特徴は、セルフマネジメントです。セルフマネジメントとは、指揮系統やコンセンサスに依存することなく、メンバーそれぞれが意思決定に関する責任や権限を持って動くシステムのことです。普通の組織とは異なり、相互信頼によって統制が取られています。

信頼

ここでは「信頼」がキーワードとなっています。
似ている言葉に「信用」があります。「信用」とは、条件つきで他者を信じることです。

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対して「信頼」とは、他者を信じるにあたって、いっさいの条件をつけないことです。それはひとの可能性を信じることであり、条件なしにその人を信じると決めた自分自身を信じることでもあります。

しかし、信頼を前提にしたコミュニケーションは合意までに何度も対話を重ねていく必要があり、不確実性が高く、手間と時間がかかります。トップダウンで、「これはこういうものだ。従ってほしい。」と伝える方がよっぽど楽です。

組織改革後は、メンバーが主体的に活動できる基盤が整っておらず、組織としてほとんど機能していませんでした。気持ちのあるメンバーはいても、情報が充分に共有されていなかったり、仕組みがなかったりしたために動き出せないような状況でした。しかし、情報や仕組みを整えていくうちに、メンバーのもつ力が発揮され全体的に動きが活発になりました。

そしてその間、社会人スタッフは介入せずに見守ってくれていました。動き出しに時間がかかっていることは、きっともどかしかったと思います。後々、社会人スタッフの方から以下の話を聞きました。
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赤ちゃんが転んでしまったときに、「なにをやっているんだ。これだからお前は」とは、言わない。それはひとの可能性を信じているから。

子どもが靴ひもを結ぶのに時間がかかっても、私がそれ結んでしまったら、子どもは結局結べるようにはならない。代わりにやってしまうことで、無力感を味わってしまうかもしれない。

失敗は成長のきっかけであり、組織にとっては必要なコストである。私たちスタッフも学生メンバーを信じなくてはいけない。
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もし実際に社会人スタッフの力を借りていたら、私や学生メンバーの成長の機会は大幅に少なくなっていたと思います。

思い返すと、信頼をもとに行動するというこの変化は、「組織改革」と同時に始まったことではないかもしれません。

そもそも代表の私自身は、団体を立ち上げた経験どころか、サークルのような学生の団体に所属したこともありません。専門も教育でなく農学です。教育ボランティアの団体を立ち上げると宣言した時に、私が持っているものは何もありませんでした。

そんな信用できるかわからない私の言葉を、周りが無条件に信じてくれたことからいまの組織は始まりました。そのことから、ひとの可能性を信じる土壌はもとからあったのだと思います。

おわりに

みなさまの運営される組織は、私たちの組織とは背景も目的も異なると思いますが、人と人の間柄・相互の関係はどの組織にもあると思います。今日お話した中で少しでもみなさまの運営される組織のお役に立てるような箇所がございましたらうれしいです。

私たちは、不確実な時代とよばれるいまを、仲間たちと手を取り合って生きぬくことができたらと考えています。現在私たちが行っている組織改革は、まだ実験の途中です。今後ともその様子はホームページで発信していきます。また、1年分のダイジェストをまとめた資料も作成中です。みなさまからのご意見を頂けますと心強いです。

最後に共により良い未来をつくる仲間として、今後ともよろしくお願いいたします。

スキありがとうございます!
全国のカフェを空き時間にお借りして子どもたちの自学自習をお手伝いする、NPO法人 / 学生団体 Cafe de 寺子屋 の公式ホームページです☕️